2006年06月02日

英雄の孤独と哀しみ

…後にはただ極楽の蜘蛛の糸が、きらきらと細く光りながら、月も星もない空の中途に、短く垂れているばかりでございます。

言わずと知れた、芥川龍之介「蜘蛛の糸」の一節でございます…。

昆虫と同類視されることが多い蜘蛛だが、同じ節足動物門に属する昆虫類とは別のグループで昆虫との大きな異点は脚の数が8本あることである。小説にも描かれているように蜘蛛=糸! 全ての蜘蛛は<しおり糸>と呼ばれる糸を必ず引いて歩くそうだ。
捕食するのに代表的なクモの巣(網)は横糸に粘液性があり獲物が粘りつくようになっている。クモが網を歩く際には粘りのない縦糸を伝って歩く賢い奴なのだ。

「蜘蛛の子を散らすように…」という言葉があるが... 実際にその光景を目撃すると言葉通りの凄さで、思わず感嘆する! その後、蜘蛛の子は糸を空中に流してそれに乗って空を飛んでいく...

摩天楼煌めく空間を駆けてゆく、蜘蛛男。


スパイダーマンとの出会いは小学生の時だった。たまに買っていた<別冊少年マガジン>に<日本版スパイダーマン>が連載されたのである... 劇画は池上遼一 氏、後にストーリー提供で平井和正 氏が参加。超人故に悩めるヒーロー、そしてカッコ良さに魅了されていった。しかし、ストーリーは暗い展開が多かった。当時の世相とのギャップなのか...? 基本設定ディティールは本国版スパイダーマンと同じだが、日本人向けにかなり設定改変を施していた...。

単行本化された<あとがき>に平井 氏が記している。
<唐突に超人能力を持ち合わせてしまった平凡な若者が、自分自身を持て余しつつ彷徨する…『青春の咆哮』だと> 青春には、ほど遠い小学生のわたくしが何故これほどまで日本版スパイダーマンに夢中になったのか... 未だに不思議なのである。

今、読み返しても遜色はない... むしろ現時代には薄れてしまった<ストイック>な世界観がそこにあり興奮させてくれる。 日本版が登場したのは1970年<昭和45年>の大阪万博年... 異例の100ページ連載というスタイルであった。

スパイダーマン


来年、公開予定の「スパイダーマン3」。。

コミック版と映画版での能力の違いは<クモの糸>だ。
映画版は既にご存知のように手首に出来た腺から直接発射している。流れとしては、とても自然である!しかし、コミック版では科学的に合成された粘液を装填した投射器があり、それを手首に装着している。
何故、コミック版スパイダーマンは蜘蛛の最大能力である糸を超人能力として得られなかったのだろうか...? これも、未だに不思議なのである...??


面白い記事があった。
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大崎茂芳 奈良県立医大教授(生体高分子学)は人間がクモの糸で作ったロープにぶら下がる−。それが実際に可能なことを実験で確かめた。

コガネグモ約100匹から3ヶ月かけて、太さ5マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の糸を採取。約19万本の束にして長さ約10センチ、太さ約4ミリのロープを作り、ハンモックのつりひもの一部に使った。このハンモックに体重65キロの大崎教授が数分間乗ることができた。理論上は約600キロまで耐えられるという。

使ったのは主に7種類あるクモの糸のうち、枝からぶら下がる時に使う「けん引糸」1本でクモの体重の約2倍の重さに耐えられる。 <5月23日付 共同通信>
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英雄の孤独と哀しみ...。
悩めるスパイダーマンの最大の悩みは、この蜘蛛の糸の能力を得られなかった事なのかも知れない。
posted by ぽんしょん at 08:02| Comment(0) | TrackBack(0) | □ 昭和臭回顧録
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