わたくしだけではない... 行き交う人々も皆一様に、異彩を放つ容姿に惹き込まれていた。歳の頃は三十代... スラリと伸びた手足、品の良い顔だちをした美人である。
長い髪の毛が車輪に巻き込まれないのだろうか?
そんな心配を他所に、彼女は人込みをすり抜けながら軽快にペダルを漕いでいる。
徐々に離れていく姿を目で追い... また会えるかな? と、ふと思う。
唐突に出くわした彼女は、ひと際目立ち... そして強烈な存在となった。
チャ○が見たかったら事務所に遊びに来い...!
わたくしをからかうように、そんな台詞を口にしたこともあった彼が... あのスナックから姿を消した頃だったろうか!? 今となってはもう記憶が定かではなくなった。
いつものように、そのスナックで晩メシを喰っていた時だった。そこへ、一人の老紳士が女性を伴ってお店に入って来た。
脚が少し不自由なのか... 老紳士は杖をついている。一歩遅れて入って来た女性はとても長身で... そこで、ハッと息を呑んだ。
紛れもなく、その女性は<彼女>だったのである!
しかし、この時点で彼女が何者なのか...? まだ、それを窺い知ることはできない... わたくしがいた。
<つづく>
